美しい水草水槽を維持管理するには、CO2を添加したり、肥料をあげたりなど普通の熱帯魚水槽とは違った配慮が必要です。
もちろん水質も水草の育成に深く関わります。水草は種類によってはかなり繊細なため、飼育水のpHやKHなどが変わると調子を崩したり、成長速度や見栄えに大きな影響が出てしまいます。
美しい水草水槽を維持するために、まずは水草に影響を与える成分を知っておきましょう。
そして、水草の求める成分を含んだ水質に維持することが大切です。
この記事では水草と水質の関係性や、水草の品種別に必要な栄養素について解説していきます。
水草水槽を管理されている方は、ぜひお役立てください。
水草と水質の関係
まずは水草と水質の関係性について確認していきましょう。
ここでは下記の成分が水草に与える影響について解説していきます。
- pH/水素イオン指数
- KH/炭酸塩硬度
- GH/総硬度
- NO3/硝酸塩
- Fe/鉄
- PO4/リン
- K/カリウム
水草への影響:pH/水素イオン指数
水草水槽でなくとも、アクアリウムを管理する場合は切っても切り離せない存在とも言えるpH(水素イオン濃度)。
水草が育てやすいpHは6.5~7.3とされていますので、基本的には中性の7.0を保ちつつ、大きく傾きすぎないように調節しましょう。
pHが中性から大きく外れてしまうと、水草が溶けてしまうことがあるため注意が必要です。
水草への影響:KH/炭酸塩硬度
続いてはKH(炭酸塩硬度)について。
KHの数値が水草に直接影響を与えることはないのですが、KHが上下するとpHが傾きやすくなるため、結果的に水草の調子が崩れてしまう場合があります。
KHが上がり始めたら、ソイルを交換するなどの対策を行ないつつ、程よい数値(1~3°dH)を維持するように心がけましょう。
水草への影響:GH/総硬度
GH(総硬度)とは、水に含まれているミネラル分(カルシウムやマグネシウム)の総量のことを指します。
日本の水道水はほとんどが軟水で硬度が低いため、パールグラス系など硬度を要求する水草を育てる場合は岩や牡蠣殻を導入して調節しましょう。
反対に硬度を下げたい場合は、ソイルを敷くのがおすすめです。
水草への影響:NO3/硝酸塩
NO3(硝酸塩)は、水草の養分として必要な窒素の役割を担います。
生体のフンや餌の食べ残しなどが最終的に硝酸塩へと分解されるため、水草水槽を運用する際は魚と一緒に育成を行ないましょう。
ただし、NO3が蓄積しすぎると生体に悪影響を及ぼし、コケも生えやすくなるため、定期的に水換えをして対処してください。
水草への影響:Fe/鉄
Fe(鉄)は赤系水草の発色に大きく影響します。
水草の色味がくすんできたり、白化してしまうような場合は、鉄分を含んだ添加剤を導入して様子を見ましょう。
水草への影響:PO4/リン
PO4(リン酸)は水草の成長率に関わる成分で、この値が低いと新芽などが育ちにくくなります。
ただし魚の餌などにも含まれる成分のため、生体を飼育していれば、水槽内のPO4が不足することはまずありません。
NO3と同様に、蓄積しすぎるとコケが生えやすくなってしまうため、定期的な水換えで除去しましょう。
水草への影響:K/カリウム
最後はK(カリウム)について。
カリウムは水草の光合成を促すための重要な栄養素なのですが、水槽内で発生することがほとんど無いため、肥料によって添加する必要があります。
水草の下葉が縮んだり、成長が止まってきたなと感じたら、適宜カリウムを含む栄養剤を添加しましょう。
水草品種別!育成に必要な栄養素の例
水草水槽では、上述してきたような成分にCO2添加量や照明の光量が加味されることで、育成具合が変わってきます。
水草によって要求する栄養や好みの環境が若干異なりますので、なるべく似た環境を好む水草同士を組み合わせてレイアウトしてみましょう。
ここからは水草水槽に導入されることの多い下記の水草たちを例に、育成に必要な栄養素を解説していきます。
- ミクロソリウム プテロプス
- ルドウィジアsp. スーパーレッド
- ブセファランドラ
- キューバパールグラス
- アマゾンソード
- ロタラ ロトンディフォリア ベトナム H’ra
- オーストラリアン ノチドメ
ミクロソリウム プテロプス
ミクロソリウムは活着させてレイアウトすることの多い水草なので、栄養を添加する場合は液体タイプのものを導入しましょう。
基本的には丈夫で育てやすい水草なので、窒素・リン・カリウムがバランスよく配合されたものであれば問題ありません。
ルドウィジアsp. スーパーレッド
ルドウィジアsp. スーパーレッドは赤い水草のため、鉄を添加して美しさを維持しましょう。
ただし鉄分を添加しすぎるとGHが低下しやすくなりますので、過剰添加には注意が必要です。
ブセファランドラ
ブセファランドラはやや低め(5~7程度)のpHを好むため、ソイルを敷いた水槽で管理するのがポイントとなります。
養分が少なくても育つので、追肥などを特に必要としないのが魅力です。
キューバパールグラス
キューバパールグラスはGHが高めの水質を好むため、龍王石や気孔石など硬度を上昇させる石を使ったレイアウトがおすすめです。
光が弱いと徒長する傾向があるため、明るめのライトを採用しましょう。
アマゾンソード
アマゾンソードは丈夫な水草のため、基本的な熱帯魚水槽であれば、栄養剤の添加はそれほど必要としません。
もし成長速度が落ちてきたり、葉が溶けるような様子があれば、カリウムを添加してみましょう。
ロタラ ロトンディフォリア ベトナム H’ra
ロタラ ロトンディフォリア ベトナム H’raは赤い水草ではあるのですが、鉄分を添加するよりも、照明とCO2を強化したほうが赤く育ちやすいです。
光合成を促すのがポイントのため、カリウムを中心に栄養がバランスよく配合された肥料を添加しましょう。
GHの高い環境を嫌うため、ソイルや調整剤を使用して硬度の上昇を防ぐ工夫をするのがおすすめです。
オーストラリアン ノチドメ
オーストラリアン ノチドメは養分をあまり必要としない水草です。
ただし、CO2が少ないと光合成が十分にできず枯れてしまう場合が多いので、様子を見つつCO2の量を調節しましょう。
水草水槽にCO2を添加する必要性とは
CO2(二酸化炭素)は植物の光合成を促す効果があるため、水草水槽の美しさを維持するためには必要不可欠なアイテムです。
育成難易度の高い水草にはもちろん必須ですし、さほど養分を必要としない丈夫な水草も、CO2を添加すると見違えるほど美しく仕上がります。
そしてやはり、光合成を行なうためには照明も必要です。
水草育成用のLED照明は、植物の成長を促す波長がバランスよく取り入れられているため、水草の種類に合わせて最適な光量のものを設置してやりましょう。
まとめ:水草と水質の関係!pH・KHなどが変わると水草の成長は変わるのか
今回は水草と水質の関係性や、水草の品種別に必要な栄養素について解説してきました。
水草水槽はかなり奥が深く、飼育水に含まれた成分や栄養素によって、成長速度や色味、調子などが明らかに変わってきます。
特に重要なのが窒素・リン・カリウムなので、まずはこれらの栄養素が不足しないように注意しつつ、水槽管理をしていきましょう。
水草の種類に合わせて硬度を調節したり、鉄分を添加するのもおすすめです。
今回の記事を参考に、皆さんも水草水槽を美しく維持してみてくださいね。
トロピカライターの井上あゆみです。
金魚から熱帯魚・海水魚まで、全部で20種類程度のお魚を飼育してきました。
お気に入りはイエローヘッド・ジョーフィッシュ。怒ったような顔をしているのに、実はかなり臆病というなかなか憎めない海水魚です。アクアリウム初心者の方でも楽しく読めるような記事を書いていくので、よろしくお願い致します!