オーバーフロー水槽のフロー管には2つのシステムがあり、ひとつを「三重管」、もうひとつを「コーナー加工」と呼びます。
この2種類にはそれぞれメリットとデメリットがあり、向いている水槽サイズや飼育に適した魚種などが異なるため、どちらのフロー管タイプにするかはよく確認して決めておかなければなりません。
そこで今回は、それぞれのフロー管の特徴や選び方について詳しくご紹介していきます。
記事の後半ではオーバーフローに欠かせないピストル管の役割や種類についても解説しますので、オーバーフロー水槽の購入を検討中の方は是非参考にしてください。
オーバーフロー管とは
オーバーフロー水槽に水を入れるとある程度までは水位が上昇しますが、フロー管の入り口の高さを超えるとフロー管内に水が流れ込むため、水槽の水位は一定に保たれていますよね。
そしてろ過槽へ落下した水は再びポンプで汲み上げられ、給水管を通って水槽内に戻されます。
つまり、
- 水槽内の水位を一定に保ちつつ、ろ過槽へ落水させる
- ポンプで汲み上げた水を水槽内に戻す
このように水槽とろ過槽をつなぐ水の通り道のことを、まとめてオーバーフロー管と呼んでいるのです。
オーバーフロー管には大まかに「三重加工」と「コーナーカバー加工」という2つの種類ありますので、それぞれの特徴やメリット・デメリットを確認していきましょう。
3重管加工
まずは三重管加工について。
こちらは筒の中心から
- 給水管
- フロー管
- カバー管
の順で、3つの筒が重なって構成されるオーバーフロー管です。
3重管のメリット
三重管加工のメリットとしてまず挙げられるのが、水槽内で目立ちにくいという点です。
3層の筒をすべてクリアー仕様にすれば、かなりスタイリッシュにすっきりと見せることができます。
また、三重管は水槽内のどの位置にも取り付けることが可能なので、魚が回遊しやすいというメリットもあります。
もちろん水槽の中央に取り付けることも可能なので、円柱型水槽のオーバーフロー管には三重管加工が採用されることが多いですね。
3重管のデメリット
一方、三重管加工のデメリットとして挙げられるのが、オーバーフロー管内の掃除が手間になってしまうという点です。
きれいな状態であれば目立ちにくいというメリットのあるクリアー管は、コケが生えるとかなり悪目立ちしてしまいます。
そしてこのあとご紹介するコーナー加工のものと比較すると、三重管加工の方が数千円は値上がりしてしまうというデメリットも。
「魚の回遊スペースを広く取りたいから三重管加工にしたい。でも、頻繁に掃除するのは面倒…」
というときは、カラーを黒にしてコケが目立たなくなるように対策しましょう。
コーナーカバー加工
続いてはコーナーカバー加工について解説していきます。
こちらは給水管とフロー管を四角いカバーで覆い隠す加工方法です。
コーナーカバーのメリット
コーナーカバー加工のメリットとしてまず挙げられるのが、三重管加工よりも価格が安く済むという点ですね。
筒の直径が太く、取り外しも簡単な作りになっているため、掃除がしやすいというのも大きなメリットと言えます。
コーナーカバーのデメリット
デメリットとしてはカバーが目立ちやすいという点が挙げられます。
コーナーカバー加工のカバーは黒色で作られることが多いので、バックスクリーンなどを貼らないと色が浮いて見えてしまうのです。
カバーをクリアにすることもできるのですが、そうすると汚れたときにかなり目立ってしまいます。
また、コーナーカバー加工の場合はカバーが水槽内で大きく出っ張るので、その分水槽が狭くなり、大型魚が回遊しにくいというデメリットもあります。
予算とメンテナンス性で選択しよう
オーバーフロー管のタイプを選ぶときは、ご自身がどのくらいの予算をあてることができるのか、どのくらいの頻度で掃除をすることができるのかを考えつつ選択しましょう。
2種類のオーバーフロー管については以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてみてくださいね。
水槽の種類別!フロー管の選び方
アロワナなどの大型淡水魚を飼育する場合と海水魚・サンゴを飼育する場合では、向いているフロー管タイプが異なってきます。
予算やメンテナンス頻度でオーバーフロー管を選ぶのが難しいときは、水槽のサイズや飼育する魚種によって選択してみましょう。
アロワナ水槽の場合は水槽サイズで決めよう
アロワナなど大きく成長する魚を飼育する場合、水槽サイズに十分な余裕があればコーナーカバー加工、サイズがギリギリであれば三重管加工のフロー管を選びましょう。
上述したようにコーナーカバー加工ではフロー管を設置する部分の水槽幅や奥行きが狭くなってしまいますので、アロワナが回遊(方向転換)しづらくなってしまいます。
また、ベアタンクで飼育することの多いアロワナでは、コーナーカバー加工を隠すレイアウトができないため、どうしても目立ってしまいます。
ベアタンクでなおかつ水槽サイズにもそこまでの余裕がない場合は、水槽側面から距離をとった三重管加工を施すのがおすすめです。
海水魚・サンゴ水槽の場合は掃除しやすさで選ぼう
一方、海水魚やサンゴを飼育する場合は水質を保つことが最優先となりますので、取り外して掃除がしやすいコーナーカバー加工のものを選ぶのがおすすめです。
配管内の汚れをしっかりと落とすことができれば、水流を維持しやすく、ろ過能力の低下も防ぐことができます。
コーナーカバー加工は目立ちやすいのがデメリットとなりますが、海水魚やサンゴ水槽ではフロー管を隠し目立ちにくくするレイアウトがしやすいため、見栄え的にも問題ありません。
三重管加工とは異なりデッドスペースが少ない(水槽側面の隙間ができにくい)設計なので、小型の海水魚やサンゴが隙間に入り込んでしまうというトラブルも回避することができます。
ピストルの種類の選び方
最後に、オーバーフロー水槽の配管には欠かせないピストル管について、役割や種類を解説していきます。
ピストル管の役割と種類
フロー管とろ過槽・ポンプをつなぐ塩ビ管でできた配管パーツのことを、ピストル管と言います。
ピストル管は
- メイン水槽からフロー管を通って落下してきた水をろ過槽へつなぐ
- ろ過槽を通ってポンプに吸い上げられた水をメイン水槽へ戻す
という2方向へ流れる水の通り道の役割を担うため、このパーツがなければオーバーフローを成立させることはできません。
種類はストレート型とエルボ型の2種類が主流なので、以下からはそれぞれのピストル管の特徴を解説していきます。
ストレート型ピストル
ストレート型ピストルはフロー管を通る水がろ過槽へまっすぐ落ちるような設計の配管です。
大型水槽では落下する水の重量によって配管に負担がかかり、破損や水漏れなどのトラブルにつながることがあるのですが、ストレート型ピストルは落水距離が短く負担のかかりにくい作りになっています。
水量の多い大型のオーバーフロー水槽の場合は、ピストル管はストレート型にするのがおすすめです。
エルボ型ピストル
一方、エルボ型ピストルは落水ではなく、ろ過槽からメイン水槽へ戻る給水距離を短くすることが可能です。
つまりポンプ流量を最大にして使うことができます。
ただし落水時には配管へ負担がかかりやすい作りをしているので、大型水槽に使用するのは不向きです。
小型~中型のオーバーフロー水槽で使用しましょう。
配管構造も併せて検討しよう
ピストル管はストレート型とエルボ型で配管にかかる水の重さや水の回転数が変わってきます。
あとからパーツを変えると、それに応じてすべての配管を組み直す必要がでてくる場合があるので、水の重さや回転数をしっかりと計算しつつ配管しましょう。
東京アクアガーデンでは、オーバーフロー水槽の制作や配管作業の代行を承っておりますので、疑問点やお悩みなどがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ:オーバーフロー水槽は三重管とコーナーのどちらが良いの?ピストルも解説
今回は三重管とコーナー加工というフロー管の種類の特徴やメリット・デメリット、オーバーフロー水槽に欠かせないピストル管の役割などについて解説をしてきました。
フロー管やピストル管は種類によって適した水槽サイズや魚種が異なるため、まずは飼育する魚や水槽サイズを決めてから配管を調節しましょう。
東京アクアガーデンではオーバーフロー水槽の制作や配管作業の代行を承っておりますので、配管の選定や組み立てに自信がない方、オリジナルのオーバーフロー水槽を制作したい方は、ぜひお気軽にご相談くださいね。
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トロピカライターの井上あゆみです。
金魚から熱帯魚・海水魚まで、全部で20種類程度のお魚を飼育してきました。
お気に入りはイエローヘッド・ジョーフィッシュ。怒ったような顔をしているのに、実はかなり臆病というなかなか憎めない海水魚です。アクアリウム初心者の方でも楽しく読めるような記事を書いていくので、よろしくお願い致します!